Cスティックぶんぶん丸

世の中には世界でただ一人、自分だけが知っていたり、気付いているモノやコトがあるだろう。いや、実際には自分以外にもそれを知っている人は居るかもしれないけれど。まぁとにかく僕にはそう思っているモノが一つある。


10年ほど前、僕は父親の仕事の都合で中国の上海という場所に4年間住んでいた事がある。僕は生粋のテレビっ子だったが、上海ではアメトーークリンカーンを見ることができない。せいぜい見られる番組はNHK(世界中で見られるNHKは凄いのだ)のサラリーマンNEOとケータイ大喜利だ。この2つは僕の人生に大きな影響を与えた偉大な番組ではあるが、エンタメに飢えた僕にはちょっと薄味だった。


エンタメストロングスタイルの番組を求めて現地で放送されるチャンネルをザッピングをするものの、何かと中国人の子供がド級の高音域で民謡を歌っている場面を見せられる。そんなチャイニーズドリームを掴もうとする田舎の子供とその親に辟易する日々だったが、ある日とんでもない番組に出会った。


その番組は格闘技の祭典のような体を成している番組でどうやら男女混合のトーナメント方式のようだった。煽りのVTRもそこそこ格好いい。各々、自分の流派?の動きをしてみたり、どこを鍛えているのか分からない修行をする映像が流れる。いよいよ興奮してくるな。まるでバキの「最大トーナメント」だ。


ついにゴングが鳴る。しかし様子がおかしい。対峙する両選手はずっとぴょんぴょん跳んでいる。片足で。そして地についてない方の足は紐でくくられて膝を前に付き出す格好をしている。なんだこれは。両者は膝を突き出し突進する。その突進にさっきの修行は活きているのか?


膝と膝が衝突する度に熱狂する観客席が画面一杯に映し出される。しかし、明らかにその熱狂する観客席は別撮りだ。試合中に見切れる観客席には人っ子一人いないし席のタイプも違う。熱狂する観客席の映像を注意して見るとなんかサッカーのユニフォームみたいなの着てる。もう競技が違う。あまりの新鮮さに決勝戦まで見てしまったが、一回戦の面白さがピークだったな。


この異常な番組を語ることができる日本人はおそらく僕一人だろう。こんな閉ざされた記憶を思い出すキッカケとなったスマブラキャプテンファルコンの空中レバー前入れA攻撃に感謝の気持ちで一杯だ。今日も元気にCスティックをガチャガチャしようと思う。